コラム:アメリカでの2週間インターンシップ(第4回)

当教室の卒業生、SH(工学部3年生、大石小学校出身)が東大生の生活を不定期にレポートします。教室に通ってきている小学生、中学生にとって「大学」とはまだ遠い世界のことだと思いますが少しでも身近に感じてもらえると嬉しいです。(2022年10月ニュースレターからの掲載です。


第4回:アメリカでの2週間インターンシップ

世の中の大学生は大学の勉強をしているか遊んでいるだけだと思われがちですが、企業の活動にインターンシップ生として参加する機会も非常に多くあります。オフィスや工場を見学したり、仕事をしている人から直接話を聞いたり実際に業務に携わってみたりすることで、外から想像しているだけではわからなかった、業界で働くことの具体的なイメージを得ることができます。この夏日本最大手空調機メーカーのインターンに参加し2週間アメリカで貴重な経験をしてきましたので、今回はその見聞録をみなさんと共有していきます。

<インターンシップの内容について>

オフィスがあるビルの入口

ヒューストン(3日)→ワシントンD.C.(4日)→ニューヨーク(7日)の3都市を巡り、それぞれ工場やオフィスやビルの見学を行いました。ヒューストンの工場は日本ではまず見ることのない規模で、1kmを超える建物の中を数十本の製造ラインが貫き、車で部品が運ばれている様子はまるでひとつの都市のようでした。また、建設中のビルに設置された大規模な全館冷却システムを見学し、超高層ビルがどのような仕組みで全館空調を実現しているのかを間近で実感することができました。

また、実地での見学だけでなく現地の空調工業会や省エネ推進団体との対談も行い、最終的には北米において空調事業が向かうべき方向性と戦略について事業提案を行いました。アメリカでの空調は日本とは全く異なる形を取っており、建物に内蔵されたダクトによる全館空調や、夏のみエアコンを利用し冬はガス暖房を用いる慣習が特徴的です。従って日本企業が事業を拡大する上で現地の需要を正確に分析することが不可欠であると感じられました。また、国際的に厳しくなりつつある省エネ規制をアメリカにおいて適用することの課題を知りました。日本で調査活動を行なっているだけでは知ることのできない現地の需要や制約を知ることを通じて外国企業の進出や国際的規制の強化を考える際必要な観点の足がかりを得た、非常に有意義な研修でした。

<その他アメリカでの生活について>

今回訪問したいずれの都市もそれぞれ日本とは異なる光景や生活様式を有していました。ほんの少しではありますが、特に印象的だった点をご紹介します。

コロナ対策:

常にマスクの着用を求められる日本とは対照的に、アメリカではほぼ誰もマスクを着用しないままの会話や食事が当たり前となっていました。一般住民だけでなく公的な職業やサービス業に就く人々の中にもマスクをつけた人をほとんど見かけなかったのが特に予想外でした。マスクに抵抗を抱く文化的背景の影響も大きく、感染自体はかなり発生しているもののそれを受け入れてもとの日常生活に戻ることが優先されているようです。

Ubarタクシー:

多くの都市では公共交通機関の使い勝手が悪く(運行範囲が狭い、治安が悪い)、代わりにUbarを利用しました。これは個人タクシーを配車してくれるサービスで、アプリに現在地を登録すると近くにいる運転手を呼び出すことができます。日本のタクシーとは異なり、運転手が政府の認可を受けていない一般人なのが特徴的です。実際米国でも明確に合法ではありませんでしたが、グレーゾーンのままサービスを拡大させてからロビーイングによって制度を安定させる戦略をとったようです。遵法意識をあくまで相対的なものとして捉え、利益や社会便益を優先して行動することを許す文化は日本には存在しないものであり、社会イノベーションの発生確率を高める要因の一つではないかと考えました。

国連:

 空き日程を利用して国連本部を訪問しました。セキュリティーチェックが非常に厳しく、飲食物を持ち込むことも禁止されています。国連では、テレビでよく目にする総会や安全保障理事会の会場をツアーで巡ったり、国連グッズを販売する売店で買い物をすることができます。売店では国連に関連するグッズ(SDGsバッジなど)だけでなく、各国ゆかりの土産物も取り扱っています。100か国以上の国旗や伝統工芸品が並ぶ光景は滅びゆく地球の文化を可能な限り保全しようと試みる宇宙船の倉庫を見ているようでした。ちなみに日本のコーナーにあったのは「心豊かに すこやかに 暮したい」と書かれた器でした。個人的にはもっといいものがあると思うのですが、誰が選んでいるんでしょうね。

今回は以上となります。次回をお楽しみに!